昇進昇格試験の対策としてインバスケットの問題を購入し、取り組む方が多いと思われます。
このページでは、インバスケットの練習の仕方を考えてみたいと思います。
敵を知る
インバスケットについて、ある程度は知っておいた方が評価は取りやすいと思います。
ですから、まずは世の中に出回っているインバスケット本を手にとっても良いと思います。
たかだか2千円、3千円で昇進昇格試験に合格できるのだったら、これほど素晴らしいものはありません
(実際には本を読んで点数が上がったというよりも、はじめから能力発揮度の高い人、つまり本など読まなくても合格する人であったというケースの方が圧倒的に多いと思いますが・・・)。
インバスケット本を読む際は、深く読み込みこむというよりも、ざっくりとインバスケットの姿を把握しておく程度がよいと思います。
多くの方の目標は昇進昇格試験に合格することであって、インバスケットのエキスパートになることではありません。
もっと言えば、能力を向上させる、能力発揮度を高めるという点が本来的な目標になるべきです。
能力が高く、業績を上げられる人が昇進するというのが人事の本来の姿だからです。
インバスケットを練習することはとても重要ですが、そこに自分自身の能力を高めるという視点があることが望ましいと言えます。
インバスケットは実践あるのみ
インバスケットの全体像が把握できたら、インバスケットの演習課題を手に取り、解くことが重要です。
人材アセスメントの合格率は3~4割と言われていますので、基本的に能力が高い人以外は、本を読んでも合格するということは難しいのが現実です。
ただし、一度昇進昇格試験に不合格となった人は、次の挑戦の機会に合格しやすいという現実もあります。
会社によっては何らかのお手盛りがある可能性も否定はできませんが、そういった下駄が無いという前提の上では、一回目でプレッシャーに慣れ、落ち着いて取り組むことができたという理由が大きいと考えられます。
自動車の教習所で1回目の卒業検定で落ちた人が、2回目の検定では非常にリラックスし、合格しやすいのと同じです。
つまり、プレッシャーに慣れるという点で、実際にインバスケットを練習してみることが重要なのです。
インバスケットをはじめとした人材アセスメントは、その根本的な設計において、時間的プレッシャーを重要視しています。
時間的プレッシャーを受けた時に候補者の実力が初めて出るという考え方をとっているのです。
実際にインバスケットの練習をしてみると分かると思うのですが、「時間があっという間に過ぎていく」「時間が足りない!」という状況になる方が多いと思います。
本番の試験でこのような状況にならないように、まずは予め時間的プレッシャーに慣れることが有用なのです。
逆に言うと、インバスケット演習を練習する際は、予め決まった制限時間内で自分にプレッシャーをかけて取り組まない限り、あまり意味ありません。
多くの方が、制限時間を無視して取り組む傾向にありますが、練習の意味が薄くなってしまいますので、あまりオススメできません。
練習の際は、必ず制限時間を守るようにして下さい。
何度も時間的プレッシャーを経験するうちに、ある程度余裕を持ってインバスケットに取り組むことができるようになります。
インバスケットの模範解答に意味があるか
実際の人材アセスメントのでは、模範解答と突き合わせて点数を付ける訳ではありません。
一般的なペーパーテストのように、受講者の回答が○か×かでチェックされる訳ではないということです。
これは、自由記述方式でもマークシート方式でも同じです。
そもそも、模範解答がないということです。アセッサー(評価者)も手元に模範解答がない状態で受講者の回答をチェックするのです。
では、どのように評価されているかといいますと、評価軸となるディメンジョンにプラスとなる行動とマイナスとなる行動を受講者の回答から読み取って、点数化されるのです。
これを踏まえると、インバスケットの回答としては、ディメンジョンにプラスになる行動をすればいいということになります。
ではこのような「行動」とはどのようなものでしょうか。
これは、管理職としての望ましい行動であることに間違いありません。
ですから、インバスケットの練習をするということは、管理職としての望ましい行動を身につけると言っても過言ではないのです。
そうすると、模範解答そのものが重要なのではなく、(模範解答が正しいという前提で)模範解答のように行動できるか、行動できる思考があるかというということが重要となってきます。
まずは、管理職としてのあるべき姿・ありたい姿を考えて下さい。そして、様々なケースで管理職がでどのように行動すべきかを考えて下さい。
できれば、自社の昇進昇格試験で使われるディメンジョンも把握しておいた方が良いでしょう。
ディメンジョンは総体として管理職としてのあるべき姿を示したものになるからです。
そして、自社の成果を出している・認められている管理職の行動をよくよく観察することが望ましいでしょう。
インバスケットの回答で部下に期限を決めて報告させるように決め打ちすることは簡単ですが、なぜ必要なのか、その前提となる思考がないと、回答は不自然なものとなります。
インバスケットの演習問題と模範解答を購入し、練習すればするほど点数が落ちていくのは、管理職としての思考をすっ飛ばして、模範解答をコピペしようとするからに他になりません。
できるだけ通常の実務で試してみる
能力向上によりインバスケットの点数を向上させようとするのであれば、インバスケットを練習して感じたことを日常の業務で試してみることがとても重要です。
何故なら、インバスケットは日常の素の自分のあぶり出しをするものであり、日常の素の自己を改善することで始めてインバスケットの評価をアップすることができるからです。
これはインバスケットだけでなく人材アセスメント全体に共通する考え方です。
確かに、「試験まであと一週間しかない!!」というのであれば、このようなある程度の時間が必要な方法は無理です。
こういった場合、恐らく「慣れる」ことに重点を置いた練習をするのが最善でしょう。
しかし、試験まで数ヶ月程度の猶予があるのであれば、下手に小手先のテクニックを追い求めるよりも、”急がば廻れ”という通り、意識を高く持って日常の業務に取り組む方がずっと効果があります。
仮に、自分に部下がいない場合(殆どの方はそうだと思います)であっても練習することは可能です。
会社の中で一人で仕事することはありません。関係会社、上司、関係部門、ステークホルダーに囲まれて仕事をしているのです。
自身の仕事への取り組み方、問題解決への取り組み方、の関係者への対応の仕方などを再点検してみれば、仕事自体もうまくいくようになるし、試験にも合格することになれば最高ではないでしょうか。